いろいろなことを考察する

「42万死亡推計」の計算方法では、「死亡者数」は「感染者総数」にほぼ比例する


私がネット上でしていることの まとめ は、こちらに。
https://sarkov28.hatenablog.com/entry/2022/03/29/160915



目次


(1)序論

「42万死亡推計」の計算方法では、「死亡者数」は「感染者総数(感染したことのある人の数)」に「ほぼ比例」します。

これは意外なことではないので、同じ様にお考えであれば、本エントリを読んで頂く必要はありません。

「42万死亡推計」の問題点を述べる中でこの「ほぼ比例する」という特徴を使うのですが、「ほぼ比例する」が自明とまでは言えないかと思ったので、こうしてご説明しています。

本エントリでは SIR モデル内での計算には触れません。触れる必要はないからです。
(本エントリは、twitter のスレ (まだ書いてません。書いたら貼ります。) と同じ論旨ですが、本エントリの方が詳しいはずです。)

図だと、こうなります。

図1 「42万死亡推計」計算の概要
[図1] 「42万死亡推計」計算の概要

(2)「42万死亡推計」の前提

計算に際して西浦氏は、以下などを前提としました [*2-1]。

  • (a) 一度感染したら再感染はしません。
  • (b) 全国民を年齢で3つの世代(子供 (0~14)、成人 (15~64)、高齢 (65~))に分けました。
  • (c)「流行終了まで、何も感染症対策はしない」との現実にはあり得ないシナリオを採用。
  • (d) 基本再生産数(皆に免疫がない状態で、1人の感染者が感染させる人数の平均値)の値は不明だが、2.5 と仮定。

この他の主な前提としては、

  • (e) 世代毎に感染しやすさが違うと想定(感受性の異質性の導入)。
  • (f) 世代毎の感染させやすさの違いは、データ不足により組み込めなかった(感染性の異質性は導入しない)。
  • (g) 計算開始時には、成人世代に10人の感染者がいると仮定。

があります。


[*2-1] 紙媒体(2020-06-02 発売の、Newsweek 2020-06-09 号)と 2020-06-11 公開の電子記事 の「「8割おじさん」の数理モデルとその根拠」。どちらも github 資料 を参照している。

(3)各世代の感染者総数の計算

これら前提を組み込んだ SIR モデルを使って、流行終了までの感染の推移を計算します。 すると、子供、成人、高齢それぞれの、感染者総数(=感染したことのある人の数)を得ることができます。

こうして、
(高齢の感染者総数)
(成人の感染者総数)
(子供の感染者総数)
が計算できました。

この3つを合計すると、(全体の感染者総数) になります。

図1 「42万死亡推計」計算の概要(「全体の感染者総数」まで)
[図2] 「42万死亡推計」計算の概要(「全体の感染者総数」まで)

(4)全体の死亡者数の計算

西浦氏は、子供の死亡者数をゼロと考えた [*2-1] ので、以下では子供を省きます。

西浦氏は、(高齢の感染者死亡率) と (成人の感染者死亡率) という定数を用意していたので、計算で得た感染者総数とこれら定数があると、(高齢の死亡者数) と (成人の死亡者数) が計算できます。

(高齢の死亡者数)  = (高齢の感染者総数)  × (高齢の感染者死亡率)
(成人の死亡者数)  = (成人の感染者総数)  × (成人の感染者死亡率) ...... (式1)

(全体の死亡者数) は、(高齢の死亡者数) と (成人の死亡者数) の合計です。

図1 「42万死亡推計」計算の概要(「全体の死亡者数」まで)
[図3] 「42万死亡推計」計算の概要(「全体の死亡者数」まで)

(5)結論:全体の死亡者数は、全体の感染者総数にほぼ比例する

(式1) で計算しているので、
(高齢の死亡者数)は、(高齢の感染者総数)に正確に比例します。
(成人の死亡者数)は、(成人の感染者総数)に正確に比例します。

したがって、
「全体の死亡者数」は、「全体の感染者総数」にほぼ比例します。

世代毎ならば、死亡者数と感染者総数は正確に比例します。
全体の死亡者数は、全体の感染者総数に正確には比例せず、ほぼ比例となります。

以上、

「42万死亡推計」の計算方法では、「死亡者数」は「感染者総数(感染したことのある人の数)」に「ほぼ比例」します。

をご説明しました。

更新履歴

  • 2024-03-19
    公開。