いろいろなことを考察する

西浦氏の Scientific Reports 論文について(4)Table S1 のパラメータは再計算されるべき


私がネット上でしていることの まとめ は、こちらに。
https://sarkov28.hatenablog.com/entry/2022/03/29/160915



目次


(1)序論

西浦氏らのグループは、2023-10 に Scientific Reports にコロナワクチンに関する論文を発表しました。
後に「コロナワクチンで死者9割以上減 京都大チームが推計」と共同が報じた論文です。(以下、西浦論文、と書きます。)
Evaluating the COVID-19 vaccination program in Japan, 2021 using the counterfactual reproduction number

図4.1 西浦論文の Figure 1
図4.1 西浦論文の Figure 1

本稿で Figure 1 について直接言及することはありません。
西浦論文については複数のエントリで書いています。

本稿では、このうち「論文について(2)」と「論文について(3)」の検討を踏まえ、西浦論文の補足情報 Table S1 に記載されているパラメータは再計算されるべきであることを示します。

(2)西浦論文の補足情報 Table S1 のパラメータは再計算されるべき

西浦論文の補足情報 Table S1 に示されている( e 以外の)パラメータは、再計算されるべきです。

パラメータのうち、 p,\ r が再計算されるべきなのは、この2つのパラメータが、実質的に1つのパラメータ  p×r だからです。2つのパラメータとしてではなく、1つのパラメータとして再計算されるべきです。
この件については、別稿である 論文について(2)論文 式(3)、式(8)の無駄なパラメータ で検討しました。ここではこの件を、西浦論文に示されている式の定義から導出しました。また、西浦論文が計算したパラメータが、別稿で導入した1つのパラメータ  p×r と比べて大きくバラついていることを示しました。

Table S1 のパラメータ、 ω^{house},\ ω^{work} が再計算されるべきなのは、この2つが報告率によらない(=全ての報告率に共通の)値であるべきだからです。現状の  ω^{house},\ ω^{work} は報告率で変化しています。この2つが報告率によらないことを前提とした尤度関数を構成し、再計算すべきです。
この件については、別稿である 論文について(3)活動度は報告率によって変化すべきではない で検討しました。ここでは、 ω^{house},\ ω^{work} が報告率によって変化すべきでない理由も示しました。また、西浦論文 Figure 1 と、計算した活動度  h_t とを重ね合わせたグラフを参考までに示しました。

なお、 ω^{house},\ ω^{work} を全ての報告率に共通の値として計算すると、一般には、西浦論文 Figure 1 に示されているフィッティングの状況は、現状より悪化すると思われます。しかしそれはむしろ、西浦論文のモデルの本来の姿だと思われます。現状からの悪化が観察されるなら、その差はむしろいわゆるオーバーフィッティングではないでしょうか。

(99)更新履歴

  • 2023-12-30
    公開。
  • 2024-01-04
    別稿「西浦氏の Scientific Reports 論文について(2)」に、「更新履歴 2024-01-04」の大幅な修正をしました。これに合わせて本稿のタイトルを修正し、本文の内容も変更しました。修正前の本稿のタイトルは「西浦氏の Scientific Reports 論文について(4)Table S1 のパラメータは、全て再計算されるべき」でした。