いろいろなことを考察する

NHKスペシャルで使われたグラフの縦軸には誤りがあります

修正履歴 1 2 3

NHKスペシャル「パンデミック 激動の世界2」で使われたグラフの縦軸ラベルには、誤りがあります。

(1)ややこしい数学抜きでもこのグラフの縦軸ラベルの誤りは理解できます

2020-08-30 の 21:00 からNHKスペシャル「パンデミック 激動の世界2▽ウイルス襲来 瀬戸際の132日-後編-」という番組が放送されました。

この中で使われたグラフが、別エントリ で指摘したのと同じ誤りを犯しています。
別エントリ を読まなくても、本エントリを読めば、NHKスペシャルのグラフが間違っていることは理解できると思います。)

番組開始から 12分後付近で示されるこのグラフの縦軸ラベル「新規感染者数」は間違っています。正しくは「感染者数」とすべきです。

画面1 「接触8割減」を説明するグラフ
画面1 「接触8割減」を説明するグラフ
本エントリではまず、

  • 番組のナレーションは、縦軸ラベルとは異なる説明をしています

という点を説明します。 もし縦軸ラベルが正しいとすると、グラフに関連する番組の説明が目茶苦茶になります。
縦軸ラベルを修正すれば、この点はうまく納まります。

この後、別エントリと関連した説明をします。

(2)番組のナレーションは、縦軸ラベルとは異なる説明をしています

番組では、このグラフと共にナレーションが流れます。
ナレーションが番組での説明の軸になります。
このナレーションは、縦軸ラベルとは異なる説明をしています。

画面1から少し時間を前に遡ったところの画面とナレーションを見てみます。

画面2 接触を6割減らした直後のグラフ
画面2 接触を6割減らした直後のグラフ
図2は接触を6割減らした直後を示しています。

画面3 接触を6割減らして少し経過した時点のグラフ
画面3 接触を6割減らして少し経過した時点のグラフ
図3はそれから少し経過した時点のグラフです。

画面2から画面3を示しながら、番組では以下のようなナレーションが流れます。

「人と人との接触の削減が6割だった場合、感染者数の増加は止まるものの、減少には至りません。」

ナレーションで「6割だった場合」と言っているのは、グラフの図2から図3で横に伸びている「白い線」のことです。

ナレーションは、白い線が水平に伸びるのを見せながら「感染者数の増加は止まるが減少しない」としています。

「感染者数の増加は止まるが減少しない」時に、水平に伸びる線は、「感染者数」のグラフです。
つまりナレーションは、白い線が「感染者数」だと言っています。

したがって縦軸ラベルが「新規感染者数」では間違っています。
正しい縦軸ラベルは「感染者数」です。

(3)グラフ全体の説明は、縦軸ラベルとは食い違います(この項目は削除しました)

この論点は、私の説明の補強になると考えて書いたのですが、補強しないと考えた方が自然であると判断を変えたので削除しました。失礼しました。(脚注の修正履歴の 3)

理由を詳しく書くと、グラフ中の「感染拡大を抑制できるレベル」というのは「適切な入院治療を行える患者数」に近いと解釈していたのですが、「クラスター追跡を行える新規感染者数」と解釈した方が自然だと判断を変えました。
後者の解釈に立つのであれば、グラフの縦軸は「新規感染者数」でも問題ないのでこの論点は私の説明を補強しません。

(4)別エントリと関連した説明

NHKがなぜこんな間違いをしたのかは分かりません。
グラフを作成する際に、新型コロナクラスター対策専門家のグラフを見たのかも知れません。
このグラフの説明が行われる直前、画面には新型コロナクラスター班の西浦氏が映し出されていました。

本項目を読まなくても、NHKスペシャルのグラフが誤っていることはご理解頂けるようにしたつもりですが、本項目では別の角度からの説明を行います。

画面1のNHKスペシャルのグラフと、別エントリ で示したグラフとは、接触削減のやり方が少し違います。なのでグラフの形は違います。
NHKスペシャルのグラフの山はとんがっていますが、別エントリ のグラフは富士山みたいです。

形が異なっていても、グラフ縦軸の正しさを見分けるには、同じ方法を使うことができます。
「グラフの縦軸の値の不連続ジャンプ」があるかどうかを見れば良いのです。

不連続ジャンプについては 別エントリ(4)別エントリ(7) で説明しました。
接触確率を変更した時、新規感染者数のグラフなら不連続なジャンプが発生します。感染者数のグラフならジャンプしません。

画面1を見ればわかる通り、接触確率を変更した時にグラフの不連続ジャンプはありません。
これは「新規感染者数」ではなく、「感染者数」のグラフなのです。
しかるに画面1のグラフ縦軸は、「新規感染者数」となっています。

この縦軸ラベルは誤っています。

(5)他の番組のグラフにも誤りがあるのではないか

専門家会議のクラスター班は、接触削減の説明をする際のグラフとして、当初は縦軸が「新規感染者数」のグラフを使っていました。
途中から縦軸が「感染者数」のグラフに変えたのです。
NHKは、この縦軸の変更を見逃したのかも知れません。

NHKは、NHKスペシャルやBSスペシャルなどで、新型コロナの話題を何度も取り上げています。
幾つか録画したのですが、ほとんど見る時間が取れていません。「接触8割削減」はおそらく繰り返し出てくる論点だと思います。
もしかすると、他の番組でも同様の誤りを繰り返しているのではないでしょうか。
時間があったら録画を確認してみようと思います。4

NHKは、これから放送する番組で使うグラフの縦軸も、再確認した方がいいと思います。



  1. 修正履歴: 2020-12-10 NHKスペシャルのページへのリンクを張っていたのだが、該当ページが無くなったようなので削除しました。また、幾つかの表現を変更しました。

  2. 修正履歴: 2020-12-13 大きな修正をしました。(4)の内容を後方に移動し、これに伴う変更をしました。「である」調を「ですます」調に変えました。

  3. 修正履歴: 2020-12-19 (3)の内容を削除し、関連する語句を修正しました。理由は(3)のところに書きました。

  4. 2020-12-13 時点でも、録画の確認はできていません。